微分可能レンダリングを用いた金属表面上の傷の視認性向上描画法

概要

金属の切削加工では,切削面に傷が発生することが多く,品質を確保するために職人による目視の外観検査が必要とされている.従来,この外観検査は実際に金属製品のプロトタイプを切削して行われていたが,この方法は時間コスト及び材料コストの両面で非効率であった.そこで近年では,CGを用いたデジタルツイン技術が注目されており,仮想空間上で切削シミュレーションデータをレンダリングし,その結果をもとに外観検査を行うことが増えている.本研究では,Mitsuba3の微分可能レンダリングを活用して環境マップ光源を最適化することで,物理ベースで切削傷の視認性を向上させるレンダリング手法を提案する.切削傷を画像空間における輝度勾配としてモデル化し,最適化の目的関数として隣接ピクセル間の輝度勾配最大化と,それによる輝度値の過剰な増加を抑制するL2正則化を組み込んだ.実験の結果,本手法が切削傷の視認性向上に有効であることが示された.また,この結果は被験者による定性評価と仮説検定を通じて,統計的に有意であることが確認された.

収録
Visual Computing 2025
引用
"微分可能レンダリングを用いた金属表面上の傷の視認性向上描画法," VC2025 , no. P118, 2025.